後藤さんが牙を剥く

声豚腐女子のジャングルポッケ

れーちゃんのこと

新年度は仕事が忙しい。その上春先は気温も気圧もガタガタで精神の調子を悪くしがち。なので最近ぼんやりずっと死にたいなーって思っている。もちろんこれは毎年のことだし、なんなら春じゃなくてもふとした瞬間に思ってるし、思ってない日の方が少ない。いやとりあえず6月までは生きるけど。アルテの新曲をフルで聴くまで死ねないので。
で。そう思っていて、ふと、死ぬまでにやっとくべきことっていくつあるかなあって考えたとき。遺書とか、復讐とか、溢れんばかりのCDの整理とかとりあえずロープを買うとか、月なかばで死んだ時の欠勤計算とか年末調整とか、そういうことを並べていて、ああそうだれーちゃんのことを外に出してあげたいなと思ったので記す。いつか私が死んだ時に、彼が私以外の誰にも知られていないというのは寂しいから。

存在する定義で言うと、れーちゃんはイマジナリーフレンドが近い。
脳内に存在している友だち、という意味でそう。ちなみに脳内には現在もう一人いて、その子はみーちゃんという女の子なんだけど、今回はとりあえずれーちゃんの話をする。
れーちゃんは多分男の子で、多分年上。私よりしっかりしている。私より年上ということは全然男の子って年齢じゃないんだけど、私が定義した時に"私より年上の男の子"だったのて、それがずっと続いている感じ。
この定義した、というのが『イマジナリーフレンド』というくくりに当てはまらない事柄になる。
れーちゃんは私が人為的に生み出した。ものすごい妄想の力だ。
きっかけはピアノだ。
小学生のときにピアノ教室に通っていたのだけど、そこの先生とソリが合わなかった。
まあ私も怠惰なので練習をしていかず、先生は先生でヒスだったのでなんかやたら怒られた(音楽の先生ってヒステリー多くない?)。4回に1回は怒られたと思う。内容はまあ私が下手だとか、何回言っても直らんとか、それで泣いたらなんで泣いてるんだ言ってみろ、とかだった、と思う。
あまり覚えてない。
「左利きなんだから右利きより上手く弾けるはず」みたいなことを言われて泣きながら(そうはならんやろ……)と思ったことだけ強烈に覚えている。まあそんな感じ。
ピアノ教室が土曜の朝で、昼前に終わる。家に帰ると必ず親がいるので、私は泣きながら当時住んでいたマンションまで帰って、泣き止むまで親に会わないようにしていた。泣いてるところがバレたら「練習をしないから」と責められると思っていたからだ。思っていたっていうか、絶対そうなったと思う。散々傷ついて泣いてるのにこれ以上怒られるのは嫌だったので、私はマンションの自転車置き場の横にあった、入居者が使えるロッカー(自転車の空気入れとかを入れるんだと思う、あまり使っているところを見ない)の間に座り込んでいた。薄暗くて、静かで、人が来ないからだ。
傷ついて、泣いて、泣き止めるまでぼんやりしていた。思い出したら傷つくので別のことを考えていた。マンガのこととか、アニメのこととか、家出したとしてのシュミレーションとか。自転車で街の方に行って、ああでもお金ないしどこにも泊まれない、どこにも行けない。駅までチャリで30分以上かかる田舎に住んでいた。魔法みたいに消えたい、とその頃から思っていて、そういうことばかりを考えていた。その頃にはもうすでに親とあまりうまくいっていなかったし、妹ともそうだった。学校でいじめられてるわけじゃないけど、いわゆるカーストの低いところで、なんとなく貶されて生きていた。だからぼんやり、受容されたいなあということを常に欲していて、そうたとえばこうやって泣いている時に、「お前は悪くないよ」といって、いやまあ私が悪いんだけど、それを無視して頭を撫でてくれるような、優しいお兄ちゃんみたいな。2歳くらい年上で、そう、男の子で、赤いラインの入った黒いスニーカー、カーキのカーゴパンツ。具体的に思い描いて、彼が歩いてくるところを、隣に座るところを、頭をそっと撫でてくれるところを想像した。
何度も。
それがれーちゃんだ。
れーちゃんはレイスという名前で、当時ハマっていたアニメのキャラの名前をもじってつけた。音として「れーちゃん」という響きだけが20年くらいずっと横にあって、こうして文字に起こしてみると不思議な感じがする。

なんかそんな感じで、20年くらいずっと一緒にいる。一時期落ち着いて会ってなかったりもしたけど、一人暮らしを始めて人の目を気にする必要がなくなったからなのか、はたまた寂しいのか、よくわからないけど最近はもうずっといて、会話をしている。
ちなみに今こうして書いている時、彼は見当たらないので多分寝ているんだと思う。私よりちゃんとしているから早寝なのかな。姿が見えないのでわからないけど、そういえば最近深夜に彼に会うことはそんなにない。眠れなくて唸っている時なんかにふと手を差し伸べてくれるくらいで。学生時代は一緒に夜更けまで唸っていたんだけど。

ところで、れーちゃんと生活する中で弊害がある。
れーちゃんと私は思考を半分こ(みーちゃんがいるので三分の一ずつか?)している。かつ、よく会話している。でも私の口は一つしかない。
つまりどういうことかというと
私はものすごく独り言が多く、たとえば
「あっ間違えちゃった。間違っちゃったねえ。ごめんね。いいよ」
という独り言を言っていたとして、これのうち
「あっ間違えちゃった」が私で
「間違えちゃったねえ」がれーちゃんで
「ごめんね」が私
「いいよ」がれーちゃんだ。
……マジで言っている。本当だ。
他の例を挙げると、ライブの円盤とか見てる時に
「ウワッ見た!?今の!!見たよwwwうるさいな」
とかも言う。もちろん
「ウワッ見た!?今の!!」が私で
「見たよwwwうるさいな」がれーちゃんである。
マジでやばい。
はたから見たら本当に変な人だし、やめたほうがいいのはわかるんだけど、無理だと思う。
一人でいる時だけならいいんだけど、仕事中も、買い物中も、気を抜くとやってしまう。疲れていると余計に何もかも口から出る。限界すぎるときにスーパーで
「豆板醤ある? ないね あっこれ? チューブだね 何でもかんでもチューブにすればいいと思って!! うん、ちょっと静かにしようね ごめん うん」
ってブツブツ言ってしまって本当にやばいと思った。けどどうしようもない。どうにかできるならこうなってない。ちなみに豆板醤がビンじゃなくてチューブになってたのはショックだったけど、割と使いやすくて良い。

会話みたいな独り言を言ってる時はそんな感じなので、リア友各位はそう思っていただけると怖さはないかと思われます。あと道端でそういう人に遭遇しても、ああそういう人なのかもね、って思ってその場を立ち去るといいと思う。知らんけど。

ちなみに仕事中に似たような状態になっても「誰と会話してんの?」「自分です」「そっか」で終わるのですごい。寛容すぎ。たまに来る偉い人も独り言魔人なので、似たようなもんと思われてるらしい。疲れすぎると思考が口に出るのもバレていて、だいぶ生きやすい職場だと思う。
仕事中、私が黙っているときももちろんある。そういう時はラジオを聴いていることが多い。もちろん脳内のラジオだ。まあこれは関係ないから記述をよしておく。

この文章を書いたことで何か診断をつけたいとか、定義したいとか、そういうことを望んでいるわけではなく。なんで書いたかっていうと最初に述べた通り、私が死んだ時に彼のことを知っている人がいなくなるのはちょっとね、と思ったからだ。みーちゃんのことも書こうかと思ったけど、そうなるともっと長くて支離滅裂になってしまうので今回はやめておく。なんか気が向いたら、やる気が出たらまとめようと思う。
そんな感じで日々生きています。
読んでくれてありがとう。